東京の街が静まり返る正月元旦の夜、何か特別なことをしたいという思いに駆られ、ふと東京駅に足を運んでみることにした。日頃の喧騒から解放された駅舎を見られる貴重な機会だと思ったからだ。
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夜の帳が降りた丸の内口に立つと、そこには昼間とは全く異なる顔を見せる東京駅があった。学生時代によく目にした昼の姿とは打って変わり、リニューアルされた夜の駅舎は、まるでおとぎ話に出てくる城のように輝いていた。
人影もまばらな正月ならではの光景に、カメラのシャッターを切る手が止まらない。赤レンガの壁面に施された照明が、建物全体を柔らかく包み込み、まるで夢の中にいるかのような錯覚さえ覚えた。
この美しい駅舎が同時にホテルでもあるという事実に、改めて驚かされる。ディズニーシーのホテルミラコスタを思わせるその佇まいに、一度は泊まってみたいという欲望が頭をよぎる。しかし、料金の高さと自宅からの近さを考えると、なかなか実現しそうにない夢だ。
それでも、この外観を眺めているだけで十分に満足感を得られる。寒さに震えながらも、冬の澄んだ空気の中でこそ、駅舎の美しさが際立つように感じる。夏の喧騒や湿気の中では、こんなにも鮮明な姿は見られないだろう。
かつて東京駅開業100周年の際には、向かいの中央郵便局ビルから駅舎を一望できたそうだ(2024年現在向かいのビルはKITTEとなり屋上から駅舎を臨める)。
しかし、元旦の夜にそんな贅沢は望めない。地上から見上げる角度しか選択肢がないものの、それでも十分に駅舎の魅力を堪能できた。
赤レンガの質感、装飾の細やかさ、そして全体のバランス。どれをとっても一流の建築美を感じさせる。現代的な高層ビル群に囲まれながらも、歴史と伝統を感じさせるこの建物は、まさに東京の顔と呼ぶにふさわしい。
人々の往来が絶えた駅前広場に立ち、シャッターを切り続けていると、まるで時間が止まったかのような錯覚に陥る。普段は考えられない静けさの中、駅舎の細部まで観察する贅沢な時間を過ごせた。
この夜の東京駅は、日常の喧騒を忘れさせ、一瞬だけ別世界に連れて行ってくれるような魔法の力を持っているようだった。新年早々、こんな特別な体験ができたことに心から感謝しながら、最後の一枚を撮影し、家路に着いた。
帰り道、カメラに収めた写真を確認しながら、また来年の元旦も訪れたいと思った。そして、いつかはあの美しい駅舎の中に泊まってみたいという夢も、密かに胸に抱いた。東京駅は、そんな夢と憧れを抱かせてくれる、まさに魔法のような場所なのかもしれない。