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自転車トラブルと修理の顛末

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夏の終わりを告げる蝉の声が聞こえ始めた8月上旬のこと。私は軽井沢への自転車旅行から帰ってきたばかりでした。爽やかな高原の風を受けながら、緑豊かな景色の中を駆け抜けた数日間は、日常から離れた至福のひとときでした。しかし、その楽しい思い出と共に、気がかりな問題も持ち帰ることになったのです。

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軽井沢からの帰路、私の愛車に異変が生じました。ペダルを踏み込むたびに、クランクから「ゴリゴリ」という不穏な音と感触が伝わってくるのです。最初は気のせいかと思い、無視しようとしましたが、走行距離を重ねるごとにその症状は明らかになっていきました。「これは早めに対処しなければ」。そう思い、お盆休みを利用して自転車の修理に出すことにしたのです。

私の自転車は、某大手スポーツ用品チェーンで購入したものでした。正直なところ、購入時から少し後悔していたのです。「サイクルベースあさひ」のような専門店の方が、より質の高いサービスを受けられるのではないかと。しかし、今回の修理に関しては、購入店に持ち込むことにしました。その理由は主に二つ。一つは、専門店が家からやや遠いこと。もう一つは、「本来の機能の障害なら、購入した店での修理が適切かもしれない」という考えからでした。

休日の朝、自転車を車に積み込み、スポーツ用品店へと向かいました。店内に入ると、さまざまなスポーツ用品が所狭しと並んでいます。自転車コーナーに向かうと、若い店員さんが笑顔で迎えてくれました。

「どのようなご用件でしょうか?」
「クランクから異音がするので、見ていただきたいのですが」
「かしこまりました。少し詳しくお聞かせください」

店員さんは丁寧に症状を聞き取ろうとしてくれました。しかし、私の説明はあまり的確とは言えませんでした。

「どのギアでもゴリゴリ感は同じですか?」という質問に、「わかりません」としか答えられなかったのです。実は、私はてっきりクランクの根元にあるボトムブラケットの問題だと思い込んでいました。そのため、ギアを変えて様子を見るという発想が全くなかったのです。今思えば、もっと細かく症状を観察しておくべきだったと反省しています。

店員さんは、私の説明を聞いた後、自転車をディスプレイスタンドに設置しました。クランクをゆっくりと回し、その感触を確かめています。次に、特殊な治具を取り出し、チェーンの伸び具合を確認し始めました。「チェーンの伸びは問題なさそうですね」と言いながら、オイルを注してくれました。

「これで少し乗ってみていただけますか?状態が改善されているかどうか確認してみましょう」

言われるがまま、私は自転車に乗ってお店の周りを一周してきました。しかし、残念ながら症状は改善されていません。むしろ、ギアを変えると異音の感じ方が変わるような気がしました。

店に戻り、改善されていない旨を伝えました。「ギアを変えるとゴリゴリ感が違ってくるような気がします」と付け加えると、店員さんは再び自転車をスタンドに乗せ、もう一度チェーンの伸び具合を確認し始めました。

「やはり、チェーンが少し伸びているようですね」

この発言に、私は少し戸惑いを感じました。最初はチェーンに問題がないと言っていたのに、なぜ今になって伸びていると言うのか。もしかして、見切り発車でチェーン交換を勧められているのではないか。そんな疑念が頭をよぎりました。

確かに、ボトムブラケットを解体して修理するとなると、かなりの費用がかかりそうです。それに比べれば、チェーン交換で済むならずっと安上がりです。しかし、本当にそれで問題が解決するのか。単なる対症療法に終わってしまうのではないか。そんな不安が胸の内にわだかまりました。

店員さんは価格表を持ってきて、チェーン交換にかかる費用を説明してくれました。チェーン代が900円ほど、工賃が1280円ほど。合計で2180円程度です。決して高額とは言えませんが、それでも確実に効果がある保証はありません。

「もう少し時間をかけて、じっくり見てみましょう」と店員さんが提案してくれました。「一時預かりにして、詳しく調べてみます。チェーン交換が必要と判断した場合は、交換させていただいてもよろしいでしょうか?」

私は同意しました。ただし、心の中では「チェーンを交換して改善されなかったらどうしよう」という不安が渦巻いていました。でも、新品のチェーンになるのだから、それはそれで悪くはない。そう自分に言い聞かせることにしました。

自転車を預けて帰る道すがら、これまでの愛車との思い出が走馬灯のように駆け巡りました。購入してからそれほど距離を乗っていないはずなのに、もうクランクがゴリゴリと音を立てる。以前は、ペダルに力を入れると後ろのディレイラーで歯飛びを起こしたこともありました。どうやら、私の自転車はちょっと調子の悪い個体なのかもしれません。

そう考えると、少し寂しい気持ちになりました。自転車は単なる移動手段ではなく、私にとっては大切な相棒です。風を切って走る爽快感、長距離を走破したときの達成感、そして時には苦しみながらも頂上に辿り着いたときの感動。そんな素晴らしい体験をともにしてきた相棒が、少し弱っているのかもしれない。そう思うと、何とか長く乗り続けたいという気持ちが強くなりました。

翌日、お店から電話がありました。「チェーンの交換が必要だと判断しました。ただ、それだけでなく、ギアやディレイラーの調整も行った方が良さそうです」という内容でした。追加の費用がかかることになりましたが、愛車のためならと思い、すべての提案を受け入れることにしました。

数日後、修理が完了したという連絡を受け、自転車を引き取りに行きました。店員さんから詳細な説明を受けながら、修理後の自転車を確認します。クランクを回してみると、あのゴリゴリ感は嘘のように消えていました。試乗してみると、ペダリングが軽くなり、ギアチェンジもスムーズになっていることが分かりました。

「今回の症状は、チェーンの伸びが主な原因でした。チェーンが伸びると、ギアとの噛み合わせが悪くなり、様々な問題を引き起こします。定期的なメンテナンスが大切ですよ」

店員さんの説明を聞きながら、私は反省しました。これまで、洗車や簡単な注油程度しかしてこなかったのです。もっと丁寧に自転車と向き合うべきだったと、深く思い知らされました。

「ありがとうございました。これからはもっと気をつけてメンテナンスします」

そう言って自転車を受け取り、私は店を後にしました。帰り道、軽やかに走る自転車の感触を楽しみながら、これからのサイクリング計画に思いを巡らせました。修理代は予想以上にかかりましたが、愛車が元気を取り戻したことを考えれば、決して無駄な出費ではありません。

この経験を通じて、自転車との付き合い方を改めて考えさせられました。定期的なメンテナンス、正しい乗り方、そして何か異変を感じたら早めの対処。これらを心がけることで、愛車との関係はもっと長く、もっと深いものになるはずです。

そして、専門知識の重要性も痛感しました。今回は大きな問題にならずに済みましたが、もし私がもう少し自転車について詳しければ、もっと早く、もっと適切な対処ができたかもしれません。これを機に、自転車の構造やメンテナンス方法について勉強してみようと思います。

家に戻り、ガレージに自転車を置きながら、私は静かに誓いました。「これからは、もっとあなたのことを大切にするよ」と。そして、次の休日には早速、近くの里山へサイクリングに出かける計画を立てました。修理を終えたばかりの愛車と共に、新たな冒険の旅に出る。そんな楽しみが、私の心を躍らせていたのです。

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